2024/8/18 -岐阜・じゅうろくプラザ- 第1試合~第4試合(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【バンタム級4回戦】
冨田 遼平(天熊丸木) vs 松原 靖貴(トコナメ)
これまで「面白い試合」を積み重ねて来た松原。
松原にしては比較的静かな立ち上がり。
冨田がスピードある左ストレートを何度も突き刺し松原を入らせない。
一定の距離を維持しながら、ズバズバと左を突き刺す一方的な展開。
ハンドスピード豊かに、距離感も抜群に冨田の左ストレートが試合を支配して行く。
後半に入り、徐々に松原のエンジンがかかり始める。
左ストレートを幾度も浴びながら詰めての右ストレート。
徐々に徐々に、二人の距離が縮まる時間が増えて行き、二人の強打が交錯する。
最終ラウンド、冨田が前に出る。
激しく激しく撃ち合う二人。
相撃ちの場面も頻発しながら、回転では松原が勝るか。
やってはやられ、最後の3分は両者が死力を尽くして試合終了。
マイジャッジ 39-37 冨田
公式ジャッジ
39-37×3 冨田
3-0 冨田
完全に支配していた試合…最終ラウンドの冨田は前に出た。
慎重に距離を維持しながら、右フックと左ストレートでフルマークも狙えたはず。
試合は死闘へと発展し、試合会場は一気に熱を帯びた。
そして、松原の土俵に乗ったうえで、松原を制した。
強かった…冨田が強さをしっかりと見せつけた。
鮮烈なデビュー戦勝利から、敗戦を踏んでのこの試合。
負けをしっかりと実力に昇華させる姿には、今後の活躍を期待せずにはいられない。
苦しい時間を乗り越えて力をつけた経験は、無敗以上に価値があるように思える。
まだまだ成長過程なのは言うまでもないが、数年先が楽しみに思えた。
対して、これで5戦勝ちなしの松原だが、松原ブランドに陰りなし。
空転させられた前半…そこから相手にも試合会場にも火を入れた。
冨田には最後まで松原を空転させる選択肢もあったはずだ。
しかし、冨田は撃ち合いに出た。
そうさせたのは何だったのか。
松原の試合は必ず面白くなる。
偶然や気まぐれだけでは5試合続くなんてことはあり得ない。
相手の心を含めた全てのものに火をつけて行く。
松原ブランドここにありの試合だったように思う。
冨田 遼平 2戦2勝(1KO)1敗
松原 靖貴 5戦4敗1分
【52.5Kg契約4回戦】
名和 祐輔(岐阜ヨコゼキ) vs 津田 康光(ARITOMI)
試合開始からしつこく詰めていく名和。
津田は入って来るところを強烈に捉えるが名和は引かず。
相撃ちで津田が効かせるとパンチをまとめて行く場面を作るが、
名和が強烈なアッパーで津田を後退させ、逆にパンチをまとめる。
お互いにピンチとチャンスを繰り替えすシーソーゲーム。
2R開始から入ってくる名和にパンチをまとめる津田。
ガードを高く上げる名和だが、割って入ってくるパンチを被弾。
しかし、怯まずしつこく前に出る名和が、ボディをきっかけに津田をロープに詰め、
強烈な右アッパーを浴びせ、津田がたたらを踏んでダウン。
立ち上がるも、足元の定まらない津田にレフリーは続行を許さず、10カウントが入った。
KOタイムは2R 1分17秒
また勝利には届かずだった津田、この試合ではやってはやられの打撃戦を見せた。
まだスタイルが固まり切らないように思える津田だが、
この試合では足を使う意思が見られ、名和の入ってくるところもしっかりと捉えていた。
器用な選手であり、ポテンシャルは持っている。
様々な試合を経験し、蓄積もでき始めたように思う。
開花の瞬間を楽しみにしていたい。
現役医師である名和。
収入も社会的地位も確立されたところにいる人間。
わざわざ勝負事の世界に身を置き、負ける姿を人前にさらす必要がどこにあるのか。
デビューから3連敗…辞めるタイミングはいくらでもあったはずだ。
肩書にそぐわぬ泥臭さで、リングに上がり続けての初勝利。
負け続けても、勝つまで続けたからこそ。
快心の右アッパーでボクサーとして輝かしい1ページを刻んだ。
ボクシングをやろうと思うこと、実際にやること、プロになること…
比較的プロになりやすいスポーツと言われるボクシングだが、
プロになる為の環境を整えるハードルの高さは凄まじい。
プロテストの合格率は高くとも、プロテストを受けるまでの道のりは厳しく…
さらにプロのリングに上がるには、周りに「大丈夫」という信頼を得なければならない。
選手をリングに上げる人々は、他人の命に責任を負う。
そして、そこで1勝を挙げること…ここまでにどれだけのハードルがあるか。
プロの1勝は重い。
片手間に…生半可に得られる栄光ではない。
勝負事の世界では「カッコ悪い」とされる負け姿を何度も晒し、
その1勝に辿り着いた名和のカッコ良さに痺れた。
地元リング初めての試合、しっかりと雄姿を見せてくれたと感じる。
名和 祐輔 4戦1勝(1KO)3敗
津田 康光 5戦1勝4敗
【ライト級4回戦】
元原 昂広(尼崎亀谷) vs 秋山 星也(名古屋大橋)
前回の試合に引き続き、この試合も気合満点で飛び出していく元原。
鋭くジャブから入ってくる相手に、秋山が左右フックを叩きつけて応戦。
手を着いた元原にダウンが宣告される。
再開後も、前に出る元原だが、
秋山が左右フックを猛烈に叩きつけて2度目のダウン。
レフリーがここで試合をストップ。
TKOタイムは1R 51秒
闘志満点で相手に飛び掛かっていった試合は前戦と同じ。
元原が元原らしくリングに散ったように思えた。
まだ元原のボクシングがハマった試合を見れてはいないが、
きっとハマれば大激戦やセンセーショナルなKO劇もあり得ると思える。
何よりも、これほど気合を全面に押し出す選手は中日本にはいない。
西日本の選手の為、継続して見ていけない可能性が高いが、
また中日本のリングで、その闘志爆発の姿を見せて欲しい。
試合後、月田 翔一郎(LUSH)に対し、
「月田選手いますか?ケンカ売られてるんで12月に倒します」と宣言した秋山。
3ヶ月連続の試合の2試合目で敗戦。
「一気にB級昇格」のメが消えていたこの試合で、秋山は落ちていなかった。
目論んだ絵が露と消える中、この試合に勝ってライバルとの対戦へ…。
新たな目標をしっかり定め、自分を律した姿に
過去の計量失格から付きまとっていた不安定さは払しょくされたようにも思える。
月田側が望んでいた秋山との対決。
相思相愛、男同士のプライドがぶつかる12月決戦を楽しみにいしていたい。
元原 昂広 4戦3敗1分
秋山 星也 6戦3勝(3KO)3敗
【ライト級4回戦】
ハンマー・タク(岐阜ヨコゼキ) vs 新美 映太(RISE)
いきなり右のオーバーハンドを突き刺すハンマー・タク。
これまでとんでもないKOシーンを演じて来たタクの一撃にも新美は怯まず撃ち合っていく。
体の押し合いではタクが押し込む場面が目立つか。
思い切り振り抜き合う二人、ボディを削り合う場面も。
しきりにボディを削る新美に、じわじわとタクのファイトが上回る。
体で押し込んで強烈なヒットを奪うタク。
下がりながらも時折、衝撃音響く一撃で応戦。
お互いに強打を交換し合う戦いだが、タクの旺盛な手数に対し、新美の手数が落ちる。
頭を付けての撃ち合いとなる中、新美がボディ連打から上へのコンビネーション。
ハンマーの強打に真っ向勝負の新美。
お互いに撃ち抜くパンチでの撃ち合い。
ここまで押し込まれていた撃ち合いも互角に渡り合う新美。
最終ラウンドの撃ち合いでは新美が細かく出入りしながらショートを浴びせ始めると
一方的に新美の拳がタクの顔面を捉える時間も。
それでもタクは前進して多くの強打で新美を襲う。
細かく襲う新美に、渾身の右を叩きつけるタク。
いつどちらが倒れてもおかしくなかった強打の応酬は、両者ダウンなく試合終了のゴング。
マイジャッジは 39-37 タク
公式ジャッジ
39-37 タク
40-36×2 タク
3-0 ハンマー・タク
デビュー戦から強打者相手に真っ向から挑んで行った新美。
ボディから打ち上げるコンビネーション、まとめる場面での回転。
連打の巧さが突出しているように見えた。
いきなり戦歴二桁の選手との対戦となって洗礼を浴びたが、
この時点でしっかりと武器のある選手。
肉付けされ勝ち上がっていく姿に期待したい。
この試合が初めての判定勝利となったタク。
4Rに渡ってしつこく詰め続け、全く落ちないスタミナも証明した。
勝ちがつかない時期を乗り越えて、気が付けばB級昇格まであと0.5勝。
相手の警戒と丁寧さ、タフさでKOには至らなかったが、
背筋の凍るフルスイングも健在、ディフェンスの向上と共に、
そのフルスイングを撃ち出せる数も増えた。
みるみる強くなってのこの立ち位置。
努力し続ける姿が垣間見える試合も、ハンマー・タクの魅力だと感じた。
ハンマー・タク 10戦3勝(2KO)6敗1分
新美 映太 1戦1敗
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