2020/02/11 -愛知・刈谷あいおいホール- 3試合目、4試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
【フライ級4回戦】
中村 潔(ARITOMI) vs 塩屋 翔生(杉田)
中村 潔 11戦3勝(2KO)8敗(4KO)
塩屋 翔生 デビュー戦
スピードに乗ってキビキビと動く塩屋に対し、ガードを固めてジリジリ前進し、
力のこもったボディを撃ち込んで行く中村…さらに右ストレートを顔面にも返す。
対する塩屋は、下がりながらも手数旺盛にガードの上からでも左を刺し、
中村のガードを割って顔面を捉えるが…中村は怯まず、グイグイと足を前に進める。
ラウンド終盤、塩屋は強烈な左ボディ。
一瞬動きを止める中村だったが、そのまま前に出続けて1R終了のゴング。
2R、下がりながらも手数を出しながら、先に先に捉えて行く塩屋。
スピードで一回り上回る塩屋だが、中村の前進は止まらない。
ガードを固めながらしつこく前進、しつこくボディを叩いて行く。
ただひたすら頑張るのが中村のボクシング…12戦目で真骨頂。
高く上げるガードを割って撃ち込まれる塩屋のパンチを浴びながらも
しつこく、しつこく、ひたすらに、ひたすらにボディを叩いて行く。
3R、このラウンドもまだまだ詰め続ける中村。
コツコツ叩き続けたボディのダメージが蓄積したか、中村が塩屋を捉えるシーンが増えていく。
ラウンド序盤にはロープに詰めて猛烈なラッシュを浴びせる。
下がりながらも、塩屋の手数は落ちることはないが…。
中村に押し込まれながらラウンド終了のゴング。
ここで、右足を引きずりながらコーナーに戻る塩屋。
トラブルか…ここで試合が終わるかと思いきや…棄権の選択はせず…試合は4R目に突入。
4R、右足が動かない塩屋、撃ち合いに応じるしか術はないが…
片足にトラブルを抱える状況では、中村に押し込まれてしまう。
それでも抵抗して激しく撃ち合う塩屋…最後までやらせる気か…。
危険な状況にも思える中、レフリーが割って入って塩屋を救出。
TKOタイムは4R 55秒。
最後まで手を返し続けていた塩屋。
通常なら止めるのは難しいタイミングだが、足にトラブルを抱える塩屋に
危険だと判断して試合を止めたレフリング…超ファインプレーだったと思える。
本人の気持ち、陣営の信頼、口を出す部分ではないのかもしれないが…
この試合は3R終了時点で終わって欲しかったようにも感じる。
ポイント的にも不利と思える中、ケガを抱えても最後まで試合を投げずに戦った塩屋。
強烈に魅力的な印象を与えてくれたが、試合は終始押し込まれ続けた形。
それでも、下がりながらも出続ける手数、スピード豊かなステップには魅せるものがあった。
冨田 真(HEIWA)、戸谷 彰宏(蟹江)、矢島 大樹(松田)…
近年、デビュー当初は日本ランカーになれるなんて思えなかった選手たちが
切磋琢磨の末に実力を伸ばしていき、日本ランキングを手に入れた。
塩屋には、どこか彼らに近いシルエットを感じてしまう。
プロのリングを戦っていく武器はしっかりとある選手。
足の怪我を治し、これから濃厚な道のりを歩いて欲しいと感じた。
中村は12戦目にしてB級昇格の権利を手に入れた。
3戦連続の1RKO負けを挟んで2年ぶりの勝利。
強い選手ではない、綺麗な選手でもない、巧さもない。
ただひたすらに頑張るのが中村のボクシング。
キャリアの中では何もできずに負けた試合もいくつか…。
それでも中村はいつも次の試合に向かい、毎試合毎試合、ひたすらに頑張り続けていた。
そうやって中村は観戦者の胸を打つ…。
強さだけがプロとしての価値ではない。
中村はプロフェッショナル…僕が言い続けた言葉をしっかりと証明してくれたように思えた。
【55Kg契約6回戦】
アドゥンデット・サイトーンジム(タイ) vs ヤノ・ジョン(駿河男児)
アドゥンデット・サイトーンジム 11戦4勝(2KO)7敗
ヤノ・ジョン 10戦4勝(1KO)6敗
1R、潜り込んでの左ボディを撃ち込むヤノ・ジョンと、ガードを回り込むような
鋭利な右フックを強烈に撃ち込むアドゥンデット。
フレームはアドゥンデットが少し上回る…ヤノが潜り込もうとするタイミングで
アドゥンデットが長く伸びるジャブを撃ち込む場面も。
…今回もアドゥンデットはヤル気満々。
ラウンド中盤、ヤノの左ボディに対し、アドゥンデットが左フックが浴びせた相撃ちのシーン。
角度的に危険な貰い方に背筋が冷たくなる。
ラウンド終盤、左ボディから右フックを撃ち込んで行くヤノ。
さらにアドゥンデットの撃ち終わりに右ストレートを強烈に撃ち込んでみせる。
2R、ヤノの入り際に左を合わせながら、ガードをまわり込むアドゥンデットの右フックが刺さる。
ジリジリと詰めながら、潜り込んでは強烈にボディを襲うヤノ。
足もしっかり使えるテクニシャンのヤノだが、この試合では足はそれ程使わず、ボディ攻めを徹底する。
ジリジリと詰めるヤノに対し、ボディをえぐりながら顔面に返していくヤノ。
右ボディに対し、カウンターのフックを合わせるアドゥンデット。
ヒヤリとするシーンが何度も訪れるが…。
ラウンド中盤にはヤノの強烈なボディに動きが止まるアドゥンデットに対し
ヤノは顔面にもしっかりパンチを返していく。
ヤノがパンチをまとめるかに思えた刹那、アドゥンデットが長いワンツーで捉えて後続打を止める。
3R、ひたすらボディから切り崩していくヤノ。
右の撃ち下ろしでアドゥンデットが揺れると、一気にパンチを纏めていく。
ロープ際でのラッシュで的確に強烈に捉えて行き、アドゥンデットが押しつぶされるようにダウン。
立ち上がったアドゥンデット、再開後は撃ち合いに身を投じるも、
ヤノが冷静にアドゥンデットの顔面を襲う中でレフリーが割って入る。
TKOタイムは3R 2分43秒
これで日本のリングで8連敗となったアドゥンデット。
しかし、石川のリングでも、この日の刈谷のリングでも、観客をどよめかせるシーンを作っている。
実力不足や無気力試合で招集禁止となるアジア人ボクサーも複数いるが…
アドゥンデットがそれと判断されないことを願いたい。
しっかりと勝利を目指し、それに片手をかけるようなシーンも作り出している。
また、このタイ人の試合を見たいと思わせてくれた。
この日は、新しいスタイルを見せてくれたようにも感じる。
ここ数戦、巧さを見せていたヤノだが、この試合では強さを示した。
また引出しを増やしてきたように感じる。
強烈な被弾も複数あった試合…まだまだファイトの中での課題はあるように感じるが
着実に力を付け続ける姿に、今後の道のりが楽しみになる。
次戦は5/17の静岡、駿河男児興行。
A級昇格を賭けた一戦になると思われる。
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