一般人によるボクシング配信のレポート(その2)(雑) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2021/3/9

一般人によるボクシング配信のレポート(その2)(雑) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2021/3/9

 

さて、前回は配信を許してもらうまでに様々な方に協力いただいて
契約を結んだところまでを記載させていただきました。

今回はその次…Youtube配信を行うところまで。
ここで…僕は人生でトップ5に入るだろう地獄を感じました。
そんなことも全部ひっくるめて、包み隠さず掲載したいと思います。

 

今回Youtube配信を行うにあたっては色んな方法が候補にありました。
Twitterライブでの配信、Facebookライブでの配信。
生配信にこだわることなく、Youtubeでのアーカイブ配信。

自分がただ配信出来ればOKではない、誰かが簡単に配信できるようなモデルを提示したい。
今回の目的のゴールはどこだろうと考えたとき、三つの要件が決まりました。

・一般人でもお金さえ払えば、ボクシングの試合配信ができるようなモデルを作りたい。
・選手の試合が手軽に見れる場所に置かれるようにしたい。
・なるべく手軽な手法で撮影できること。

SNSでの配信では、そのアカウントを持っている人にしか届かない。
となれば、やはりYoutubeがベスト…。
そして、手軽に…となれば、機材を持ち込まないといけないような方法は避けたい。
そうなれば、撮影方法はスマートホンで…となります。

ここで問題が立ちはだかります。
モバイルでのYotube配信では、ライブ配信に1000人の登録者が必要。
自分のアカウントでは80人程の登録者しかおりませんでした。

ここでライブ配信をあきらめる…という考えもありましたが、
どうせならやるだけやってみようと…。
「モバイルライブ配信を行いたいのでチャンネル登録してください!」と
SNS等を使って訴えかけようと考えました。

また、これを行うことによってこの試みがどれだけ注目を集めることができるか…
どれだけ世間に受け入れてもらえるか…それを測ることができる。
たとえ、1000人の登録者が集まらなかったとしても、
ボクシング配信の価値という意味では有益なデータ(数字)が取れると考えました。
「プロボクシングの配信を行うことでこれだけの成果が出ましたよ」という数字は
今後、放映権を買いたい!と思う人たちにとって、参考となる数字になるのではないかと。

どれだけの人が見てくれるのか、配信する人にとってどれだけのメリットがあるのか…
前例がないことによって、そのデータは全く存在しません。
だから、今後、配信してみませんか?と訴えかけるにあたって、
提示できる数字がまったくなかったわけです。

例えばA-Singが配信している動画の再生回数は参考となる数字の一つですが、
今回の配信とは前提条件が大きく違います。
「A-Sing」はこれまで積み上げてきたものがあります。
また、普段映像としてはなかなか届けることのできない「地方興行の動画」。
ポツポツとアップされているものはありますが、
大々的にプロモーションしたものは存在しないように感じます。

こっそり撮って配信するのと、放映権を購入して正々堂々プロモーションが
打てるのとでは、それも条件が変わってきます。

だからこそ、より多くのデータを取りたい!というのが今回の一つのテーマでもありました。

「やるだけやってみよう…」


実は自分は産まれつき手が震えています。
モバイルで撮影するにあたって、手振れは不可避。
見易い映像を撮影するのは絶望的です。

…誰か、協力者が必要。
そんなとき、この試みについて3月から経緯を全て知っているsakanaさんが思い浮かびました。
全国を飛び回って、アマチュアボクシングの試合動画を撮影し、Youtubeへアップしている方です。
モバイルライブ配信も経験済み…sakanaさんがいれば…。

答えは二つ返事でOK。
sakanaさんにとって、何かメリットがある内容ではありません。
それでも、まったく躊躇することなく、OKの返答をくれました。

元々、sakanaさんに対しては、どこか憧れのような気持がありました。
決勝だけ見て、「プロで戦って欲しい才能探し」くらいしかしていなかった(できなかった)アマボク。

それまでほとんど見ることのできなかったアマチュアボクシングの
動画をアップしてくれることで、予選を勝ち上がるシビアさであったり、
そこで繰り広げられたドラマの末の決勝であることを知ったり。
そんな世界観を、アマボクから遠く離れた位置にいる自分にYoutubeを通じて届けてくれたのがsakanaさんでした。

だからこそ、ライブ配信ができる状況になる…ことも嬉しいことですが、
“あの”sakanaさんと一緒に何かをやれることに対して興奮がありました。

これでワーっと宣伝して、誰も相手にしてくれなかったら、とってもとっても恥ずかしい。
自分以外の人間も巻き込んでスベってしまうことへの恐怖もありながら、
sakanaさんと何かをやれるという喜びとあわせて、
色んな思いが入り混じりながら、チャンネル登録1000人を募集します。


ただし、自分自身がモバイルライブ配信なんてやったことがないですし、操作方法もわからない。
場合によってはsakanaさんにも、他の人にも思わぬ迷惑を掛ける可能性もある。
色々ネット上の情報を漁ってみても、実際やってみるまでどんな問題が存在するかわかりません。

操作方法確認の為のテスト期間を鑑みて、1000人のチャンネル登録の期日を11/10に設定しました。
ここまでに1000人が集まらなければ、モバイルライブ配信はあきらめよう。


ここから、様々な人達が協力してくれて、凄まじいスピードでチャンネル登録者数が伸びていきます。
最初はフォロワーさんたちや自分の身のまわりの人達が拡散してくれました。
400人を超えた頃に一旦上がりどまりましたが、
そこからも様々な人たちが粘り強く拡散してくれます。

ここで、AsianBoxingが英文でこの試みを紹介してくれたことで、
アプローチのできなかった海外へも情報が拡散されていきます。
チャンネル登録者数は一気に200人程増加。

現役世界王者、元世界王者…様々な方々もリツイートしてくれたり、
直接メッセージをいただいたりなど…。

さらに朝日新聞が記事にしてくれたことで、一気に1000人に向かってチャンネル登録が増加。
この力は絶大で、ボクシングにまったく興味のない知り合いも、この記事のURLを送れば
「なんだかおもしろそう」とチャンネル登録に協力してくれることになりました。

あれよあれよと、3週間でチャンネル登録1000人を達成。
Youtubeで動画配信を行う人の中で、
チャンネル登録1000人を達成できるのは僅か15%とも言われます。
(公式な情報ではないので、本当かどうかは定かではありませんが)

「プロボクシングの配信を行うことのメリットを提示する」という意味では
とても有益な数字を出せたと思っています。

本当にたくさんの人たちの協力の中で、一つ目の明示的な大きな成功を収めました。


ここから、次の試みにシフトを移します。
当日、どれだけ多くの人にライブ配信を見てもらえるのか。

ボクシング好きたちの間にはある程度情報は拡散された…。
これ以上に数字を伸ばすには…ボクシングに興味のない人にもこれを知ってもらわないといけない。
自分に…何ができるだろうか。


ただのボクシングファンとして、それ以外の趣味などほぼなく生きて来た自分。
アプローチできるとすれば…。

そこで思い浮かんだのは音楽でした。
10年以上前、バンドマンとして、自分のイベントを持ちそれなりにチケットを捌き、
田舎町ではあったものの、それなりに応援してもらったことが思い浮かびました。

友達もいない自分にとって、すがるところはそこしかありませんでした。
今も音楽を続けている昔の仲間に連絡し、協力してほしいとお願いし、音源を送ってもらいました。

配信しているボクシング選手名鑑ラジオの中で、アマチュアバンドの楽曲を流すことで
そのバンドのファンにも、ボクシングに興味を持ってもらえないかと考えたわけです。
普段、アマチュアバンドの音楽なんて聴かない層と、普段ボクシングを見ない層。
お互いのファンをシェアするようなことができないか…。

そんなお願いをする中で、FMラジオへのアシスタントとしての出演が決まります。
しかも、1回の出演ではなく、月1回の定期的な出演。
この試みに興味を持ってくれたラジオパーソナリティーが声をかけてくれた形です。
今後もこのラジオ出演は続いていく予定で、1月からはコーナーも持たせてもらうことに。
思わぬ形でボクシング面白い!って話をさせてもらえる場所をいただきました。

これもまた、配信者としてのメリットとして獲得できたものの一つになります。

「自分の名前を売ることができる」

昨日までただの一般人だった自分が、
FMという公共の電波で話す機会を得られることになったのです。
自分は個人なので、実はここはあまり自分の利益には直結しないかもしれません。
ただし、例えば企業名義で配信などを行うことを想定した場合、
宣伝効果としては大きなものになるように感じます。

実際、コロナウイルスが蔓延し、新たな試合が少ない事から落ち込んでいた
ボクシング選手名鑑へのアクセス数は、月10万アクセスの増加を見せました。

「放映権を購入して配信する」メリットとしてアピールできるものは、一つでも多い方がいい。

ボクシング愛、奉仕の心…そういったもの前提に絞ってしまえば、
放映権を購入する人の幅はぐっと狭くなってしまいます。
綺麗ごとじゃなくていいと思います。

逆に言えば、配信に愛や奉仕を強制するよりも、
最終的にはしっかりとしたビジネスになってくれた方がいい。
目的は、配信者の愛や奉仕の心を試すことではないからです。
自己顕示欲でも、ビジネス目的でも、その動機を問う必要はありません。
結果的に試合が配信され、ボクシングが潤えばそれでいい。


さて、ここまではいいことの話。
物事にはいいところも悪いところも必ず存在します。
10対0なんて、車の追突事故くらいのものではないでしょうか。

今回は、僕が今回のYoutube配信で体験した地獄を…。
僕の人生でワースト5に入るくらいに苦しい局面も存在いたしました。
決していいところばかりではありません、ありのままに掲載します。


1つ目の地獄。
多くの人に拡散したことで、様々な意見をもらうこととなります。
特に音楽をやっていたころの自分を知る人が多く、この試みを知ることとなった結果…。

「あの頃の勢いはどうした。」
「何を猫をかぶっている。」
「もっとやれ、過激なことをしろ。」


実は…自分がやっていたバンドはコミックバンド。
中坊ロック…なんて呼ばれておりました。

男子高校生にターゲットを絞り、中学生っぽい下ネタと、
高校生がマネできる楽曲、そして奇抜なパフォーマンスの3つが主軸。

客に向かってブチ切れながら洗濯バサミを投げつけ、
その洗濯バサミを拾った客が、自分に襲い掛かり、全身をその洗濯バサミで挟む…。
定番のお客さんとのやり取りがあり…。

自分の体毛に火をつけたり、ブラジャー姿で歌い踊ったり…。
「過激」と言うと、自分の顔面に竹串を刺したり、飲尿したりするバンドもいたので、
おいそれと「過激」とは言いづらいですが、マイルドに過激なこともしておりました。


逆に自分売りをすると、それに対して不快感を示す人もたくさんおります。
「裏方は目立つな」という美学もあります。

アドバイスを貰って、「それは意向とは違うなぁ…」と思っても
その通りにやらないと怒り出す人もいました。
当然、そういった人は去っていきます。

どちらかを選べば、どちらかが去る。
あちらを立てればこちらかが立たず…この狭間で迷いの極致に突入していきます。
正直、どちらかに振り切ってしまえばよかったと思っています。

「自分の名前をどこまで売れるか」のデータを取りたい思いがある以上、
もっともっと目立つ方向に振り切るべきだと思いましたが、
ある問題のせいでそれも半端になってしまいました。

振り切ることができなかった…ここは大きな大きな大失敗でした。

 

さぁ、そのある問題とは何なのか…。

2つ目の地獄。
それは、致命的なレベルで動画が作れないということです。

2DKの自宅には小さな子供たちが3人。
寝ているか騒いでいるかなので、自宅での撮影は絶望的。
場所を抑えて撮ろうと思っても、その時間が確保できない。

これまで「ボクシング選手名鑑ラジオ」という音声配信の形態をとっていたのは、
ふっと空いた時間で、車の中で録音できるという利点があったからです。
さらに、僕自身がTVも動画も見ないので、「面白い映像」というもののイメージがない。

仕事をしているか、子供や家のことをしているか、ボクシング選手名鑑を作成しているか。
毎日毎日、この3つの繰り返しの生活をしており、エンタメに触れる時間は
ボクシング選手名鑑の作成中…、手と目は作業で埋まっているので、
耳で「音楽」か「ラジオ」を聴く以外にないのです。

仮に何か映像を見れる時間が取れたときには…「ボクシングを見る」の一択。
バラエティもドキュメントも、何もかも、ほとんど見ない。
その時間があるなら、ボクシングの試合映像が見たいのです。

そんな人間に動画が作れるのかと考えたとき、当然そんなの無理でしょうと。
そこで、それを逆手に取ろうと考えます。

Twitterで過疎チューブとまで言われてしまうほどの、自分のYoutubeチャンネル。
普段、大多数に面白いと思ってもらえるものが配信されているわけでもない。
言わば底辺 Youtuber が、ボクシングのライブ配信を行うことで、
どれだけの再生回数を稼ぎ出すことができるのか。

「ほら、僕こんなに能力ないでしょ、そんな自分でもプロボクシングを
 配信したらこれだけの人に見てもらえました。」

そういった数字の対比を出そうとしたわけです。
ここでやるべきことは…能力のない自分が、能力のない中でMAX値での配信を行う。
全力で動画を作って、能力がないことを世間に知らしめないといけません。

だって…手を抜いて出した「少ない数字」と全力でやった「ライブ配信の数字」を比較したら
それはデフォルメ…辛辣な言い方をすれば「ヤラセ」になってしまいます。

とにかく、週に5本の動画をアップを最低ラインとし、
そのうえでどれだけの数字が出るのか…。

「全力でやってダメなこと(数字がでないこと)」がわかっている動画をどんどんアップしていく。
それは自分の恥部を世の中に晒していくようなもので、
これなら自分の全裸動画を上げた方がマシだと…。

「ボクシング選手名鑑ラジオ」では出場選手のインタビュー音声をアップ。
そういった内容は当然他の動画より再生回数は伸びますが…。
くちゃくちゃになっていくチャンネルの中に、そういった配信を置くことに罪悪感もありました。

配信は見事なまでに低視聴回数を叩き出し、目論見としては大成功でしたが…
自分の能力のなさをさらけ出し続ける…というメンタル的なダメージは相当な地獄でした。
多分…これは、やってみたことのある人にしか伝わらない気がします。

「昔出たアダルトビデオの映像を友達に見つかる感じ」と言えば、
心のダメージの想像がつきますでしょうか。
いや、出たことはないですが…多分こんな感じなんだろうなと思いました。

本当にそれくらいしんどかった…。

 

3つ目の地獄。

えげつないプレッシャーです。
他のライブ配信を見ていたところ…映像が時折カクカクなるだけで視聴者はブーブー。

ボクシングは瞬間スポーツ…だから、そのカクカクが気になるのもわかりますが、
サーバーや電波の問題など、配信者ではコントロールできない部分もあります。
ただ、視聴者にはそんなことは関係ない。

視聴者のデフォルトのイメージは、配信のインフラががっつり整ったTV映像です。
ぶっちゃけ、電波状況で想定外のことが起こったりなんだかんだで
配信にトラブルが起こることは当然考えられます。
ただ…それを許してもらえるのか。

撮影者のsakanaさんのプレッシャーはとんでもないものでしょう。
僕自身、なにかあったときにどう立ち回るべきか…その想定で頭がいっぱいになりました。

また、試合の日に向けて、コロナ第3波が徐々に押し寄せてきます。

少しずつ感染者数が増加し始める中、配信を行う自分達は、
2週間前から毎日2回の検温結果を記入した用紙の提出が必要でした。
熱が出てしまったら、これまでの色々なことが台無しになる可能性もある。


独占放映権であるが故に、自分たちがうまくやれなければ、その試合は届かないことになる。
とてもじゃないけど、一般人が”手軽に配信”を行うには、独占放映権は不適切。
そんな現実を突きつけられました。

放映権の形については、今後、想定の切り替えが必要。
ただし、今回に関してはもう戻れないところまで来てしまっている。
契約内容を変えてくれ…なんて今更言い出せない。
様々な所に膨大な手間をかけさせてしまうことになります。

真正面から向き合わなければならない…何度も何度もおかしな夢を見て夜中に目が覚める。
かなり、心が疲弊してしまったように感じます。

 

本日はここまで。
次回はそんな状態で迎えた配信当日とその結果について。

 

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