「破天荒ボクサー」が名古屋でも公開(雑) ボクシング選手名鑑ピックアップ! 2018/11/09
映画「破天荒ボクサー」
JR名古屋駅太閤口・ビッグカメラ南西角
シネマスコーレ
052-452-6036
●2018年11/10(土)よりロードショー
●11/10(土)~16(金)16:00
●11/17(土)~23(金)劇場へお問合せください
●料金:特別鑑賞券 1500円
https://nomadeye.jp/hatenkou.html
笑っていた。
「嫌なんやったらな、ボクシングなんかやめたらええねん。」
「ボクシングで何をやりたいか、強くなりたいのか、チャンピオンになりたいのか
有名になりたいのか、ほんまに一番したいことはなんやねんって言うたれや」
最近、選手から相談を受けることがある。
みんなそれぞれ、いろんな事情や悩みを抱えながらプロボクサーをやっている。
業界の裏事情に詳しいと思われることがある。
世界のローカルなボクシングに詳しいと思われることがある。
フリーのボクサーに詳しいと思われることがある。
そんなことはない。
僕より詳しい人間はいっぱいいる。
競技経験がない自分が、言ってやれることは、ほんのわずかだ。
体験していない人間は、空想で補うしかない部分を抱えている。
それはときに嘘になり、その人の信用を奪ってしまう。
だから、言いたくても口を噤んでしまう言葉も多くある。
そんな悩みを打ち明けた。
相手は、僕が3カ月だけ通った母校の先輩だ。
「悩みなんてしょーもないことばっかや」
笑いながら、先輩はそう言った。
山口 賢一(大阪天神)
たった一人で日本のボクシング史を塗り替えた男だ。
クラブオーナー制度。
簡単に言えば、ジムが全ての権利を握る制度。
これについては、山口倫太郎氏が書いている「ボクシングを打ち倒す者」という記事がわかりやすい。
この制度はボクシング界の抱える問題として長く長く横たわり続けている。
少々長いがネットで読めるので、是非検索して一読してもらいたい内容だ。
様々な問題があるが、一つはファイトマネー。
海外ではプロモーターの搾取からマネージャーが選手を守る。
しかし、日本のクラブオーナー制度では、実質ここが分かれていない為、
選手のファイトマネーを守る存在がいない。
そして、一度そのジムに入会してしまえば、簡単には移籍ができない”慣例”。
トレーナーも、そのジムのトレーナーが付くことになり…。
トレーナーがジムにいる時間と、選手が練習する時間が合わなければ…
選手から「トレーナーがいない」という愚痴も飛び出す。
「ボクシング…教えてもらったことないんですよね」
そんな言葉さえ聞いたこともある。
言葉の主は、プロボクサーだ。
その他…etc
「日本のクラブ制度の問題点とかそういうのは、映画見てもらえればほとんど出てるよ。」
山口の言葉だ。
常識が正義ではない。
世界中で、戦時中は人殺しが正義とされる。
価値観は簡単に覆る。
大げさな話ではない、自分たちの祖父母が経験した現実だ。
多数決からはみ出したものが、新たなものを創造する。
これもまた、繰り返されてきた現実だ。
山口賢一は引退届を出して、日本のボクシング制度を飛び出した。
海外のプロモーターに試合を組んでもらい、世界を飛び回った。
当時、日本の外では既にスター選手で溢れていたWBO世界王座にも挑戦した。
日本のボクシングが、WBOを世界王座と認めないとして、
世界中との価値観と乖離して、我が道を突き進んでいた頃だ。
独占が当たり前として成り立っていた日本のボクシング界に、
はぐれモノの振る舞いはどう映ったのだろうか。
チャンスを潰されることもあった。
「代役挑戦しかないやろな」
そんな予感は的中し、代役挑戦の噛ませ犬としてメキシコに渡った。
その後、日本国内に立場的にはJBCと同等のABCジャパンというコミッションを立ち上げ、
マネジメント制度のボクシングを実現させ、選手たちには積極的に海外へのルートを提供。
自分のジム「大阪天神ジム」を持ち、自主興行も行う。
名古屋の大学で大学ボクシング部総監督として、アマチュアボクシングにも携わる。
週に何度か名古屋を訪れるのはこのためだ。
一人何役も行い、全ての立場に立って肌身で様々なことを体感してる。
凄い人…なんだけれど、当の本人は笑っている。
偉ぶることなく、たいがい笑っている。
以前、言われたことがある。
「ボクシング選手名鑑、自分がやってなかったら俺がやろうと思ったんや」
今回言われたことがある。
「それ持って、レコードコレクトしてるってBoxRecの本部言ったらええねん、イギリスにあるから」
…まるでイギリスが隣の駅にでもあるように言う。
思わず「行きます。」と言ってしまった。
この人は自分だけでなく、軽く人の人生も変えてしまう。
「そんなん自分でやったらええねん!」
「自分で考えたらええ、考えたらやれるよ!」
そんな言葉を何度も豪快に言い放つ先輩に一言だけ言い返した。
「山口さん、長いボクシングの歴史の中で、
それに気付いた人はたくさんいても、やったのはあなただけです。」
言われた山口は、やっぱり笑っていた。
今月11月11日に、大阪天神興行が行われる。
日本のボクシングからは、はみ出したものとして扱われるABCジャパンの大阪天神興行。
ボクシング専門誌でもほとんど扱われず、妨害もあって大々的な告知もできない。
だから、世間的な知名度は低いが、そこには紛れもないボクシングが存在している。
各専門誌はボクシング専門誌ではなく、JBC専門誌と名前を変えるべきだとさえ思えてしまう。
現地でそのボクシングを見て、情報統制されているような印象さえ受けてしまい、
海外で戦う選手が言う「日本のボクシング界は北朝鮮」という言葉を実感する。
誰かさんに都合の悪いことは包み隠される。
見に行かなければ情報が得られない。
見た方がいい…目からウロコばかりだ。
大曽根駅のファミレスで久々に言葉を交わした先輩。
大事な話、どうでもいい話、気が付けば4時間。
帰り際、山口の言葉が頭の中でリフレインする。
「俺は何のためにボクシングやってたと思う?」
イタズラっ子のようにニヤリと笑った先輩はこう言う。
「いちびりたいねん。誰よりいちびりたいねん。」
社会の為に、ボクシング界の為に…そんなことではない。
「いちびりたい」
…それだけ。
だからこそ、この人の世界観は底抜けに明るく、人を惹き付ける。
11月10日から名古屋で山口賢一の映画が放映される。
きっと面白い。
山口自身がこんなに面白いんだから。
また、自分の価値観が変わってしまうかも。
そんな思いを抱いて、10日を待っている。
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