2017/11/19 じゅうろくプラザ-6試合目~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!

2017/11/19 じゅうろくプラザ-6試合目~セミファイナル(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
 
 
 

【女子ライトフライ級4回戦】
児玉 このみ(岐阜ヨコゼキ) vs 近藤 佐知子(駿河)

・児玉 このみ 1戦1敗
・近藤 佐知子 1戦1敗
 

僕は正直、女子ボクシングは見慣れていない。
近藤と塩見 寿奈(トコナメ)が戦った試合がほぼほぼ初めてのプロの女子の試合だった。
アマチュアの試合を含めても、二桁に届かないと思う。

どこをどう見ればいいのか、凄いか凄くないのか…比較がない自分には語る資格がないようにも思える。
それでも…

この試合はフレームの小さな児玉が、必死に近藤にアタックしていく内容。
男子のような瞬発力や、力強さは感じない。
 

1R、近藤の長いジャブをもらいながら、逆に左を刺して入って行こうとする近藤。
目的の違うジャブが交錯する刺し合い勝負。
ここは近藤が勝ったように感じる。
児玉の接近を巧く遠ざける。
 

2R、ジャブを使って児玉を遠ざける近藤だが、児玉も徐々に入るタイミングをつかむ。
しかし、接近すれば押し合いのような形になり、もみくちゃの展開になってしまう。
 

3R、このラウンドは接近戦が中心となる。
お互いの距離が潰れた中での攻防、明確なヒットはなかなか産まれないが
必死に手を出し続ける二人。
 

4R、このラウンドも接近戦になるが、密着したところから、
一歩下がって距離を作り、児玉が詰める前に近藤がパンチを撃ち込むことで、
近藤が優勢を印象付けたラウンドに思えた。
 

マイジャッジ 38-38。

採点は、39-37、40-37、38-38の2-0。
勝者:近藤
 

前回は際どい判定を落とした近藤。

判定の結果を聞いて初勝利に大喜び。
ジムは静岡だが岐阜大学出身、たくさんの人が応援に来てくれたらしい。
大はしゃぎする近藤に、なんだか目が潤む。
なんでそうなるか自分でもよくわからない…前の惜しい判定を知っているからか、どうなのか…。

ただただ、目の前の勝利を全身で喜び、世界チャンピオンになりたいと明るく宣言する近藤に、
何かほっとしたような思いがあったような気もする。

「まだまだこれから」「課題が多い」そんなストイックな勝利者インタビューが多くを占める中、
目の前の勝利を純粋に喜ぶ姿が、1つの試合がとても重たいボクシングの本当の姿なような気がして…。

僕なんか女子のボクシングを全然知らないから、知ったかになってしまうのかもしれないけど、
初めて女子ボクシングの本当の魅力に触れた気がする。
もしかしたら、女子ボクシングって本当に純粋で、物凄く面白い世界なのかもしれない。
 

児玉はこれで2敗。
せっかく触れることのできた女子ボクシングの魅力。
彼女がこれから戦っていく道も、やはり見ていきたいと思わされてしまった。
 
 

【フライ級4回戦】
溝口 孝良(西遠) vs 十河 正人(MSG平石)

・溝口 孝良 6戦2勝3敗1分
・十河 正人(MSG平石) 4戦1勝3敗
 

ゴングが鳴ると同時に予想通りの接近戦になる両者。
撃ち合いが土俵の二人、溝口は二の腕を巧く使って相手を遠ざけ、パンチを効かせる距離を作りながら撃ち込む。
十河はとにかく手数を出していく…ただひたすらにパンチを撃ち込む。
 

2Rも二人は真っ向からの撃ち合い。
ただひたすらに続いて行く殴り合いだったが…2R後半に溝口がわずかに失速の色を見せ始める。
 

3R、徐々に徐々に十河が溝口を飲み込み始める。
下手くそで不器用、だけども止まらない。
綺麗なんて言葉からかけ離れたところにある十河は、それと引き換えにスタミナという強烈な武器を持つ。
信じられないような手数を撃ち出しながら、一向に衰えることがない。

かたや、溝口もまた異常なほどの手数で応戦しているのだが…
普通のボクサーから考えればまた、溝口のスタミナも異常。
それでも、十河の手数には及ばない。

こちらの息が苦しくなりそうな試合は、お互いがお互いを揺らし合いながら
3分が5分にも6分にも感じられるように長く長く続いて行く。
 

4R、十河の叫び声とともに最終ラウンドの開始。
最後の力を振り絞り、十河を下がらせる溝口。
十河の手は、押されて足を後ろに進めながらでも止まらない。

距離が潰れてたまま進行した12分間。
相手を綺麗に捉えるようなパンチは少なかったが…。

「引いたら負け」
そんな言葉がよく似合う二人の熱戦は最後まで撃ち合って終了。
 

マイジャッジ 39-37 十河
 

採点は38-38が3人のドロー。

どう割れてもおかしくない試合。
ただただ、殴り合いを果たした両者の背中が大きく見える試合だった。
これほど気持ちいいドローは久々に見た。
 
 

【スーパーバンタム級4回戦】
久保田 祐介(岐阜ヨコゼキ) vs 後藤 憬(中日)

・久保田 祐介 11戦4勝(2KO)7敗
・後藤 憬 5戦2勝3敗 サウスポー
 
 

1R、距離を測り合いながら、微妙な距離のせめぎ合いとなった1R。
お互いの距離が遠い中、ノーモーションの大砲を狙うようにも思える両者。
クリーンヒットを許さない攻防…しかしスリリングな展開。
 

2R、距離が接近し始めると後藤の左がヒットし始める。
久保田も右でやり返し、熱を帯び始める。
お互いが遠い距離から踏み込んでの戦いになり、両者の頭がヒットする場面も目立つ。
このラウンド、偶然のバッティングで後藤がカット。
 

3R、強烈な後藤の左ストレートが突き刺さりバタついた久保田。
バランスを崩すも、ジャンプして強引に大勢を立て直す。
詰めようとする後藤に背中を向けるようにリングを走って距離を取る。
4回の試合に出ているが、11戦目…ここはベテランの味。

後半には久保田がノーモーションの右を叩き込み、あわやを思わせる。
 

4R、最終ラウンド、両者猛烈に撃ち合う。
久保田は頭が当たってもおかまいなし。
絶対に引かない…勝ちにすがるように攻めていく。
勝敗の重たいボクシングで、勝ちにすがれるボクサーは魅力的だ。

しかし、後藤がカウンターセンスを振りまくように何度も久保田の顔面を跳ね上げる。
それでも引かない久保田にリング上はバッチバチにヒートアップ…。
会場が盛り上がる中、最終のゴングが鳴った。
 

マイジャッジ 39-37 後藤
 

判定は39-37、39-37、38-38の2-0
勝者、後藤。
 
 

久保田はこれで8敗目。
なんでなんだろう、これだけ負けを重ねてしまう理由が、僕には全く解らない。

確かに足りないものはいっぱいある選手だとは思う。
…でも、いい選手。

僕が未だに忘れられないブルドーザー 大島 卓己(薬師寺)が猛烈な輝きを見せたのが久保田戦。
深蔵 和希(HEIWA)が一撃KOを見せた最高にカッコいい瞬間も久保田戦。
いろんなボクサーの、最高の瞬間を想像するときに…いつも久保田の顔があったりする。

いい選手のいい時期に当たってしまっているようにも感じるが…
勝っても負けても、最高の一戦をばら撒いてきた12戦。
もっともっと中心の近くにいていいはずのボクサーなのに…8つの黒星。

久保田がこの先、A級になって、ホールのファンが戦績見て
「なんだ地方の噛ませか…」なんて思ってるところをぶっ飛ばす。
そんな姿を想像したりしてしまう。

この日の後藤もまた、久保田の前で猛烈な強さを発揮した。
負け越しの強い選手と人に聞かれると、必ず名前を上げる選手の一人だったが…。
これで戦績イーブン、来年の新人王にエントリーするらしい。
きっともう、負け越しの強豪に名前を上げることもなくなるんじゃないかと思っている。

ショートレンジの連打が魅力だった時期もあったが、
この試合では長い距離でのカウンターセンスを見せつけた。
徐々に徐々に変化している後藤のボクシング、着実に強くなっている。
二度目の新人王、組合せが楽しみでたまらない。
 
 

 
 
 

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