2017/9/17 刈谷あいおいホール-1試合目、2試合目(中日本ボクシング観戦記) ボクシング選手名鑑ピックアップ!
■中日本・西部日本新人王対抗戦
【ミニマム級4回戦】
マンモス 和則(薬師寺) vs 仲島 辰郎(平仲BS)
・マンモス 和則 3戦3勝(3KO)
・仲島 辰郎 5戦5勝(4KO)
事実上の全日本新人王決定戦とも言われたこの試合。
中日本新人王MVPのマンモスと5戦全勝の仲島。
中日本新人王でMVPを獲得した選手は全日本新人王が獲れないなんていうジンクスもある。
今年はそれをそろそろ打開してほしいところだが…
いきなりマンモスの前に強敵が立ちはだかる。
また、この階級は東日本新人王にも有望選手がいるよう。
今年はミニマム級が熱い!なんて声も他方から聞こえている。
試合が開始されると静かに様子を見る仲島。
先に強烈なボディをヒットさせたのはマンモス。
一つ効かせれば嵐のような強打の渦に巻き込んでしまうマンモスに対し、
様子見に徹したか、固さからか…ほとんど手が出ない仲島。
しかしディフェンス技術はしっかりしており、マンモスのパンチをほとんど食わず、食っても単発に留める。
そんな展開の3分が終わろうとする頃、仲島がタイミングを測り終えたかのような
強烈なボディをマンモスに突き刺してみせる。
ポイント自体は、アグレッシブも含めてマンモスか。
2Rが開始されると、エンジンをふかすマンモス。
大きく強烈なパンチをガードの上から叩き込む。
仲島は体ごと持って行かれるよう…この崩れたタイミングに後続打を撃ち込みたいところだが、
すぐに体制を立て直す仲島…なかなか隙を見せてくれない。
ラウンド中盤に差し掛かると、近づいてシャープにコンビネーションを撃ち込み始める仲島。
仲島が攻め始めたことで、マンモスの大きなパンチが当たるタイミングが出始め、
ここぞとばかりに攻勢を強めるマンモス。
しかし…マンモスの攻撃は全て単発で終わらされてしまう。
強烈なパンチをもらっても、これまでのマンモスの前に沈んでいった選手たちと違うのは
その後の強打の嵐に巻き込まれないこと。
撃たれた後に慌てることなく距離を取ってすぐに立て直してしまう。
後半、仲島はマンモスの大きなパンチにカウンターを合わせ、マンモスの腰が沈むシーンも。
仲島はここで一気に詰めて出て、防戦一方に陥るマンモス…
しかしここでは、マンモスが強烈な一撃を仲島の顔面にやり返して攻撃を寸断。
相手をリングに沈めるは充分とも思えるようなマンモスの一撃。
…仲島はタフさも兼ね備えているのか。
3R、いきなりマンモスが失速し始める。
常に全力で振っていたマンモス…これまで早いラウンドで片付けてきたため露呈しなかった部分。
スタミナ不足…と併せて、ペース配分ができていないようにも感じる。
特に空振りが多くなったこの試合、全てを思い切り振っていた為、一気に消耗してしまった様子。
マンモスの魅力でもある強打…しかし、その反動が襲い掛かる。
ガス欠した選手はストレート系のパンチが出なくなる、繰り返される大きなフック…。
仲島はラウンド序盤から仕掛けていき、細かいながら力強いパンチでマンモスを捉えていく。
4R、「当たれ!!」…そんな悲痛なマンモスの叫び声が聞こえてきそう。
一発当たれば…しかし、多くの武器を失ってしまったマンモス。
当たっても、これまでのマンモスの鋭さはなく…、細かいパンチを続々と撃ち込まれて行く。
隣から女の子の声が響く…
「お兄ちゃん頑張れ!!!」
マンモスの妹だろうか…。
逆転を狙って必死に振って行くマンモス。
しかし、単純化してしまった攻撃に、もう仲島の勝ちを脅かす力は残っていない。
全力で100mを走った後に、持久走をさせられているようなもの。
「早く終われ」と思ってしまってもおかしくないのではないだろうか…。
しかし、自分の拳を信じることのできるハードパンチャーは、その拳が届くことを信じて振り続ける。
そんなマンモスの悲壮的な戦いに、終了のゴングが鳴る。
マイジャッジは39-37で仲島。
アグレッシブを強く取れば38-38のマンモス優勢もなくはないか…。
結果は、三者三様で39-37
勝者:仲島 辰郎
仲島…強い。
本当に強かった。
マンモスの衝撃的な一撃をもらうシーンもあったが、そこで隙を見せず、
シャープにパンチを放って、冷静に後続打を止める。
慌ててしまえば、マンモスは一気に飲み込んでいただろうと思う。
あの時響いた、女の子の「お兄ちゃん頑張れ」。
僕がボクシングを見始めた頃には産まれてもいなかっただろう女の子が発したあの応援は、
“お兄ちゃん”が一番しんどいところを完璧に理解したようなタイミングだった。
僕なんかより、ボクサーを理解しているようにさえ思える。
お兄ちゃん…頑張れ。
負けに負けるな…。
同日行われた西日本新人王決勝戦を勝ち抜いたのは…井上 夕雅(尼崎亀谷)。
あ…太田 アレックス(西遠)に勝った井上か!!!なんて気付く。
右ストレートをかわして、左アッパーでアレックスの顔面を跳ね上げるシーンが忘れられない。
マンモスvs仲島が事実上の全日本新人王決定戦…?
いや…まだ早いと思う。
仲島vs井上…西軍代表戦に鳥肌がヤバい。
■中日本・西部日本新人王対抗戦
【フライ級4回戦】
近藤 冬真(蟹江) vs 濱上 京武(島袋)
・近藤 冬真 6戦5勝(1KO)1敗
・濱上 京武 2戦2分
ガードの巧さが光る近藤、僕が強く全日本新人王候補に推す選手。
相手は不利予想の西部日本新人王決勝を引分の勝者扱いで勝ち抜けてきた濱上。
1Rが開始されると、足を止めて向かい合う近藤。
突進しながら力を込めて腹から攻めてくる濱上。
近藤は細かくコンビネーションを叩き込みながら、
体をグッと左に傾けて斜め下からボディを強烈に突き上げる。
しかし、距離を詰めて煩く手数を出してくる濱上を持て余す…。
そんな濱上に、唯一近藤を破った相手、柴田 亮(中日)を思い起こす。
空いたところを的確に撃ち込んでいく近藤。
この的確さも近藤の大きな武器。
有効打では上回っているようにも見えるが…。
ラウンド終盤にはロープを背にしながら、バビュンとサイドに回り込んだ濱上。
これは単純なファイターじゃないな…ちょっとまずいかもしれない…なんて思い始める。
2Rから軽い左ジャブを撃ち出した近藤。
これが機能して、濱上の接近を止める。
あとわずかに入りたい濱上を、自分の距離に釘付けにするようにして、
上下に細かく的確なパンチで捉えながら、斜め下からの強烈なボディを交えていく。
濱上の接近を食い止める軽い左は、柴田戦の時にはなかったもの。
あの負けが、近藤を強くしている…。
ラウンド終盤には細かい出入りを見せる濱上。
近藤の空振りを誘って反撃を撃ち込んでいく。
3R、このラウンドも近藤のジャブが機能し続ける。
試合を通じて鋭く振り込む濱上のパンチも近藤を捉えてはいるが、
有効打では空いた場所を的確に撃っていく近藤に及ばない。
しかし、濱上の圧力は凄まじく、撃たれても撃ち返してくる。
相手の手が止まってしまえば、一方的な展開に持っていってしまう近藤だが…。
しっかり手を返してくる濱上に対し、これまでの試合のように飲み込んでいくような展開は作れず。
4R開始直後、クリンチの離れ際に濱上の強烈な左が刺さる。
ここはもう一度抱きついて逃れた近藤。
仕切り直したところで、コンビネーションで濱上を捉えていく…。
さらにもう一度、濱上の鋭い左が近藤を捉えるが、
今度は逆に左フックに合わせたカウンターで右フックを効かせてやり返してみせる。
試合は撃ち合いのまま最終のゴング。
マイジャッジ…40-36で近藤。
判定は2-0。
39-38、40-36、38-38
勝者:近藤 冬真
マイジャッジではフルマークでも、近藤の力を考えると苦戦と考えていいように感じる。
事実、濱上のアグレッシブを採ったか、ドローに付けたジャッジもいる。
ポソッとつぶやいた…
「近藤があんなんなっちゃった…」
濱上の圧力に、いつもの圧倒的な近藤の姿は見せられず。
左をあれだけ強烈に撃ち込める、機敏にステップを踏み、ポジションを変えながら撃ち合う。
強くてやりにくい選手…濱上にそんな印象を持った。
しかし、過去に詰めてくる柴田を止められずに敗れた近藤。
この試合は左で距離をコントロールして判定をモノにした。
あの頃の近藤とは違う…それをはっきりと指し示した試合。
この男が全日本を獲ってくれるハズ…その思いはより強くなった。
西日本新人王は白石 聖(井岡)。
激闘とも言えるファイトを制して西軍代表選にコマを進めたようだ。
2016年は西日本新人王を獲得した那須 亮祐(グリーンツダ)に引分の敗者扱いで涙を飲んだが、
2度目の新人王挑戦となった今年、無敗のまま西日本を制した。
戦歴的には申し分ない実力者と感じるが…果たして…。
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