荒川 高志(緑)がいなくなった(雑) ボクシング選手名鑑ピックアップ！ 2017/07/03
いつ書こう…いつ書こうで今日まで来た。
とても気が重い。
でも、書いておきたい。
2016年の3月。
岐阜商工会議所に見に行ったリングで、初めて見た荒川。
デビュー戦の選手にフルマークで負けていた。
勝った選手は佐伯 瑠壱斗(岐阜ヨコゼキ)。
その年の中日本新人王に輝き、西軍代表決定戦まで出場した。
今月、A級昇格の権利を賭けてリングに上がる。
相手が強すぎた…そんな風にも思える試合。
1R開始のゴングから、荒川は一気に飲み込まれた。
腰が引けてしまった荒川はフルマークでの敗北。
次に見たのは名古屋国際会議場。
相手は浅野 達哉(天熊丸木)。
一回りフレームの小さな相手に攻め込まれての判定負け。
浅野は次の試合で敗北後、今年はまだリングには上がっていない。
この頃から、僕はずっと荒川が気になっていた。
気持ちが弱いのか、いいのをもらうとすぐに引いてしまうところだったり、
思い切って強く撃てないところだったり…
僕は、ボクサーのことを化物くらいに思っている。
自分のことを殴る為に、ひたすら鍛えまくった相手が待っているリングに乗り込んでいく。
あの花道をよくもまぁ、歩けるものだと思ったりする。
そして、ゴングがなると遠慮なく殴り合う。
鼻や眼底、アゴ…顔面の骨が折れることなんてよくあること。
しかも、それでも簡単にギブアップする選手はほとんどいない。
…イカれてる。
荒川の姿は…それとは違って見えた。
化物だらけの世界に、間違って人間が迷い込んでしまったようだった。
戦う恐怖、殴られる痛み…
ボクサーから普段感じることのない、生の感情をダイレクトに見せてしまう。
彼の試合を見ながらふと我に返る。
「うん…普通そうだよね。殴られたら痛いよね。」
ボクシングで痛そうな顔や、怖そうな顔を見せるボクサーって少ないから…
観戦する側も、普段マヒしてしまっている感覚。
それがボクサーとしていいのか悪いのかは置いといて、
僕はそんなシルエットを見せてしまう荒川に夢中になった。
「荒川が勝つところが見たい」
化け物だらけの世界に迷い込んだ人間が、化物を打倒してしまう瞬間が見たい。
そんな瞬間を見れたら…それは人間が強くなれる、変われる証明。
荒川の勝利を見届ける自分を想像したら、なんだか自分の人生が変わってしまうような気がした。
そこから数か月。
次の試合…荒川が勝った。
僕は、どうしても外せない仕事があって、試合を見に行けていなかった。
地団駄を踏むような思いだった…。
せっかく荒川が勝ったのに！！！！
でも、通いつめていれば、いつかは見れるだろう…。
そんな楽観的な思いもあった。
今年の中日本新人王戦。
エントリーに荒川の名前を見つける。
1回戦はシード。
準々決勝からの出場で、相手は高井 一憲(中日)。
サウスポーで、強烈な左を撃ち込んでくる選手。
…これは…ちょっとどころかかなり厳しいかもしれない。
でも…きっと勝ってくれると信じよう…。
試合当日、ゴングが鳴る。
高井の強烈な左を何度も浴びる荒川。
左フックが全く見えていない。
半身のまま、まったく届かない荒川の右ストレート。
見えないパンチが襲ってくることで踏み込めない。
そうこうしているうちに、その日一番強烈な左フックをモロにアゴに撃ち込まれ、荒川は失神…。
「俺がいないとこでは勝つのに…
これじゃ俺が疫病神みたいじゃないか…」
でも…いつか勝つところが見られれば…
そんな思いだった。
その日の試合内容をブログに上げてからしばらく。
ブログについたコメントを見て目を疑う。
「元中日本4回戦」さんから、荒川が亡くなったと…。
過去に僕が荒川を応援する記事を書いていたことから、
このブログにコメントで知らせてくれた。
信じられない思いで、ネットを検索する。
「軽自動車に跳ねられ死亡…」
２０日午前１時ごろ、名古屋市西区菊井１の市道 交差点で、
自転車に乗っていた同区新道１のアルバイト荒川高志 …
頭が真っ白になる。
よくわかんないまま、とりあえず、いつもの仕事の帰り道を、体が覚えているように進む。
下半身がなんだかフワフワして、歩いているんだけど、歩いている感覚がない。
上半身はクッキーの型で胸のところを丸くくり抜かれたみたいな感覚になって、
そこからジワジワっと目頭が熱くなって…
そこからしばらくしたら、時間差でわけのわかんないヒステリックな感情がぶわぁっと噴き出してきた。
俺…まだ勝つとこ見てねぇよ！！！！！
荒川ってボクサーは弱いって書いちゃったんだよ…。
荒川が勝ったら、ニワカでごめんなさいって書こうと思ってたんだよ…。
ボクサーがファンの予想をひっくり返すのが一番面白いって書きたかったんだよ…。
んで、アルバイトじゃねぇから！
ボクサーなんだよ！
強い奴に立ち向かってったすげぇカッコいいボクサーなんだよ！！！！
もう涙が止まらんくなって、とりあえず人ごみ避けて公園行って…
頭の中がパニックみたいで…もう、なんかたまらんくって…。
身内や仲間や、ジムの人たちや、関わりのあった人たちからしたら、
自分の悲しさとか、悔しさとか、そんなもんゴミくずみたいなもんやし
なんやったら偽善じみたものやないかって自分自身でも思っちゃったりするけど、
もうそういうのもどうでもよくって、悔しくて悔しくて。
なんで一生懸命やっとる奴がそんな目に合わないかんのよ…。
神様、あんまりにも不平等やないか…。
あかん…書いとったら泣けてきた。
もうね…あかんでしょ、こんなん。
とにもかくにも荒川選手、本当に好きな選手でした。
「ボクサーの魅力は強さだけじゃない」って僕の口癖を証明してくれた選手。
昔、荒川ってボクサーがいて、俺が行くといっつも負けてたけど、
それでもすげぇ面白いボクサーやったんやで…って話をこれから何年も何年もします。
荒川さん、ボクサーであってくれてありがとうございました。
あなたを応援できたことが、一生の誇りです。
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